エコツーリズムとは?メリットや日本・海外での取り組み事例をわかりやすく解説
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気候変動の問題が年々深刻になっており、国や企業は迅速な対策が求められています。そんな中、注目が集まっているのが「エコツーリズム」です。
この記事では、エコツーリズムとは何かをわかりやすく説明した上で、グリーンツーリズムとの違いやメリット、日本・海外での取り組み事例を紹介します。
エコツーリズムの導入を検討している担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
エコツーリズムとは?
エコツーリズムとは、地域の自然や歴史文化の体験を通して、自然や歴史の保全に責任を持つ観光のことです。地域間で地域の魅力を観光客に伝えていくことで、地域住民自らがその価値や重要性を理解し、保全につなげていくことを目指しています。
ちなみに、エコツーリズムを実行する旅行がエコツアーです。
グリーンツーリズムとの違い
エコツーリズムは、幅広い人々を対象に地域の自然や歴史の保全を目的としています。対してグリーンツーリズムは、都市部に住む人々を対象に、様々な体験を通して地域住民との交流を図ることが目的です。
つまり、エコツーリズムとグリーンツーリズムはそれぞれ旅行の目的が異なります。
エコツーリズムの認知度
内閣府の「平成26年度環境問題に関する世論調査」によると、「エコツーリズム」を意味も含めて知っている人の割合は13.8%と少なく、56.7%の人が知らないと答えていました。この結果に付随して、「エコツアー」に参加した割合も3.6%と少ない結果です。
また、地域でのエコツーリズムの認知度も、まだ低いです。そのため、実際にエコツーリズムに取り組んでいる市町村は43%に留まっています。
さらに、2年後に日本交通公社が実施した「JTBF旅行意識調査」によると、エコツアーを知らないと答えた人の割合は、56.1%でした。
年代別にみると、18歳〜29歳代の「知らない」と回答した割合が67.0%と一番高いです。30代〜50代も、約60%の人が知らないと答えています。
調査母体は異なりますが、2年経っても認知度は低いままだと分かります。
エコツーリズムの市場規模
日本でのエコツーリズム市場の認知度は低いですが、2022年度世界のエコツーリズム市場規模は、1959億米ドルに到達しています。そして、2032年までには約6,561億9,000万米ドルになると推定されています。
世界のエコツーリズム市場規模の推移は、以下の通りです。日本でもSDGsが広く謳われるようになってきた今、エコツーリズム市場はさらに拡大していくことが予想されます。
エコツーリズムを推進するメリット
エコツーリズムを推進するメリットには、主に以下の3つが挙げられます。
- 地域経済に貢献できる
- 環境保全に繫がる
- 文化保全にも役立つ
1つずつ紹介していきます。
地域経済に貢献できる
エコツアーをするにあたって、それに伴う地域の雇用や地域の収益上昇が期待できます。
実際に、ホールアース自然学校では、年間6万人の来訪者のうち3万5千人が河口湖に宿泊しました。このことにより、旅館やホテルエリアで年間8〜9億円の経済効果が生まれているそうです。
環境保全に繋がる
ツアーにもよりますが、ツアー料金の一部がツアー区域の環境保護・設備費として活用されるため、エコツアーに参加することで環境保全に貢献できます。
例として挙げられるのが、エコツーリズムの聖地「ガラパゴス」です。ガラパゴスでは、入島料を環境保全に充てています。ガラパゴスには年間25万人を超える観光客が訪れています。そのため、観光客の人数が多くなるほど環境が保全される仕組みを、ツアーから得る資金を使って作っています。
ツアーから得た資金の50%を環境保全に充て、残りの30%をごみ処理。残りの20%は、インフラ設備等に回しています。
文化保全にも役立つ
エコツアーを通して正しい歴史や文化を学ぶことができます。普通の旅行とは異なり、ガイドや情報ツールなどの案内で回るからです。
さらに、来訪者に文化や歴史を伝えていくことで、地域住民もその地域の価値に気づきます。そのため、大切にしていこうという意識が芽生えることも、メリットの一つと言えます。
エコツーリズムのデメリット・課題
エコツーリズムを実施するデメリット・課題として以下の2つが挙げられます。
- 観光公害
- 人材確保
それぞれ簡単に紹介していきます。
観光公害
観光公害とは、観光がもたらす弊害のことで、環境破壊や景観破壊などのトラブルが挙げられます。
エコツアーも一般的な旅行と同様に、観光客の移動によって温室効果ガスが大量に発生します。さらに、ゴミや外来種、病気を持ち込むこともあります。それらの行動により、その地域の生態系が破壊される可能性があるのです。
エコツアーの実施にあたり、自然を守るためにはツアー参加者の人数制限や厳重な持ち物規制なども検討しましょう。
人材確保
ガイドの高齢化や後継者不足も問題として挙げられます。
文化や自然を保護しながら楽しくツアーをするためには、正しい知識を持った人材の確保が必要です。正しい知識がないと、自然を回るツアーなどでは、希少な植物を踏んで犠牲にしてしまう可能性もあります。
また、歴史や文化に対しても間違った情報を伝えてしまうことがあるかもしれません。若者の人材を増やすためには、教育などを通して継承することが必要不可欠です。
日本におけるエコツーリズムの取り組み事例
認知度はまだまだ低い日本ですが、エコツアーを提供・実施している事業があります。それぞれの事業の取り組み事例について具体的に紹介します。
旅行会社の事例
エコツアーを提供している4つの旅行会社の事例を紹介します。
1.HIS
エコツアーデスクを設けて様々な分野に分けてエコツアーを提供しています。提供されている分野は以下の4つです。
- 国内トレッキング・登山
- 大自然・海・森・川・草原
- 環境保全・地域活性化・文化体験
- 海外トレッキング・登山
一人旅から家族旅行まで幅広く取り扱っています。
2.ベルトラ
様々なジャンルのエコツアーを提供しており、お客様満足度が高いツアーが多いです。
人気ツアーの一つに、縄文杉トレッキングツアーがあります。屋久島で行われるツアーで、送迎バスがついています。自然を感じられる点が魅力です。
他にも、自然を体験するツアーが人気のようです。
3.日本旅行
東京のエコツアーを数多く提供しています。地方に行かなくてもエコツアーを日帰りで体験できる点が特徴です。また、子供だけが参加できる特別なプランもあります。
4.じゃらん
エコツアーにレンタカーで行くとお得になるプランを提供しています。送迎バスツアーもあり、移動にかかる温室効果ガスをなるべく排出しない工夫を凝らしたプランが豊富にあります。
交通事業の事例
交通事業として、愛知県が行っているとことこツアーとDestino Rent-a-carを紹介します。
1.愛知県 とことこツアー
とことこツアーは、日本福祉大学の学生達が考案したあいちエコモビリティライフ促進モデル事業です。コミュニティバスの新しい価値を生み出すことを目的としています。
ツアー開始前に、「とこエコツアーズ」のパンフレットに割引サービスや観光地の情報を掲載。さらに、バスガイドを実施することで、「とことこバス」の認知度向上・利用促進を図っています。
常滑駅から始まり、やきもの散歩道、中部国際空港、INAXライブミュージアム、そして常滑駅で終わる工程でツアーが組まれています。各場所で、ガイドの説明を受けたり、陶楽工房などを体験したりすることが可能です。
2.Destino Rent-a-car
鹿児島県屋久島、鹿児島空港でハイブリット車を多数提供しており、エコ・ドライブを体験することができます。
軽自動車・小型車・中型車・ミニバンなどの種類があり、通常、ハイシーズンの値段が異なります。5人乗りのハイブリッド小型車だと、通常1日8,690円、ハイシーズンだと、1日10,230円で借りることが可能です。
宿泊事業の事例
宿泊事業として、星野リゾートとホテル鐘山苑を紹介します。
1.星野リゾート
星野リゾートのエコツーリズムは、環境保全に熱心な旅行者と初心者の両方を魅了することが目標です。本格的なアクティビティや施設内をサスティナビリティに配慮したものにするなど多様な層にアプローチできるスタイルを志しています。
星野リゾートのエコツーリズムリゾートとして、西表島ホテルがあります。
西表島は90%がジャングルです。そのため、西表島ホテルに泊まるお客様にガイドウォークや季節によって異なるイベントなどを提供しています。「世界遺産の学校」も開催しているため、楽しく世界遺産について学べます。
さらに、ホテルの約7割は自家水力発電、地熱、温泉排熱で作られるエネルギーです。泊まるだけで、お客様も環境保全に貢献することができる仕組みを作っています。
2.小笠原エコツーリズムリゾート
小笠原エコツーリズムリゾートは、ユネスコ世界遺産に登録されている小笠原諸島の父島に位置し、トータルガイドサービスを提供しています。
天候や季節に合わせて1日プラン、半日プランなどお客様に合わせたプランニングを提供しています。海のプランでは、野生のイルカと泳ぐことができるドルフィンウォッチング・スイムやクジラを観察できるホエールウォッチングなどが人気です。綺麗な海を見ながら海の野生動物を見ることで心もリフレッシュできるでしょう。
陸のプランには、固有植物や天然記念物の動物を見ることのできるトレッキングや戦跡ツアーなどがあります。
参考:https://www.veltra.com/jp/japan/izu_ogasawara/p/10939
海外におけるエコツーリズムの取り組み事例
エコツーリズムは海外では取り組みが進んでいます。ここでは、ヨーロッパ3カ国の取り組み事例を紹介します。
イタリアの事例
世界各国から観光客の絶えない、歴史を感じられるイタリアには、環境を守るための対策として豊富なエコツアーやエコホテルが存在します。
1.電動バイクツアーベルガモ
城壁に囲まれた歴史ある美しいベルガモの街を電動自転車を使って観光するツアーです。交通が限られた場所でも自転車を利用することで、環境に配慮しながら楽しく観光することができます。
2.電動トゥクトゥクで行くプライベート E ツアー
温室効果ガスを排出しない電動トゥクトゥクに乗って、ローマの主要な11の観光スポットを回ります。日本語を含めた9か国語の音声ガイドがあるため、環境に優しく歴史を学ぶことが可能です。
3.フィレンツェの電気自動車ツアー
街の全てが世界遺産に登録されている美しい街フィレンツェを、環境に配慮した電気自動車で回るツアーです。ツアーには、ヴェッキオ橋とヴァザーリ回廊など有名な観光地が含まれます。
4.LA FORESTALE
中部イタリアのマルケ州に位置するホテルです。このホテルで使用する電力のすべては、自給自足で賄っています。屋根やバルコニーに設置している太陽光発電でエネルギーを生み出しています。
さらに、断熱性や換気性に優れた素材で外壁を作ることでエアコンがなくても涼しくなるよう設計されています。
5.Lefay Resort & SPA Lago di Garda
イタリアのガルニャーノに位置するLefay Resort & SPA Lago di Gardaは、環境に優しいホテルです。
電気、冷暖房に使う電力は、バイオマス、コージェネレーション、ソーラーパネルなどから供給される電力を使用しています。再生可能エネルギーを選択することで、年間1,130トンのCO2を削減しています。
イギリスの事例
イギリスには、都市だけでなく地方にも豊富にエコツアーがあります。イギリスのエコツアーやホテルを3つ紹介します。
1.ハンプシャーのニュー フォレスト国立公園のガイド付きウォーキング ツアー
イングランドのハンプシャーに位置するニューフォレスト国立公園は、森や山林、荒地などすべての自然が数千年前と変わらずに残っています。この公園は、「王室林」と11世紀の王様、ウィリアムが名付けたということでも有名です。
自然や歴史を感じることのできるこのツアーは、経験豊富なガイドとともに回ります。短時間で、歴史や自然保護など現代を生きる私達が何をすべきか考えさせられるツアーです。
2.ノースダウンズの蝶と蘭
イングランドの南東部に位置するサリー州のノースダウンズは、珍しい蝶やランが豊富に生息していることで有名です。ボックス ヒルとランモアコモンで多様な生物についてガイドとともに回ることができます。
希少なものが多いため、自然保護について深く学ぶことができるでしょう。
3.スコットランド、マル島、トバモリー近くの、ガイド付きヘブリディーン農場ハイキング
スコットランド西海岸に位置するマル島で行われるヘブリディーン農場ハイキングは、地元の農家の人と直接触れ合うことが可能です。この地での暮らし方や、文化を見ることもできるでしょう。
さらに、ハイランドポニーの群れやシェットランド羊の群れに出会うこともできます。見聞きすることで、地方農業の課題にも触れることができる、学びの多いツアーです。
4.Park Grand London Hotels
ロンドン中心部とヒースロー空港の中心部に位置するパーク グランド ロンドン ホテルは、環境対策としていくつかの取り組みを行っています。
例として、低エネルギー電球への交換、モーション検知器、カードキー制御システムを設置し、無駄なエネルギーを削減することなどが挙げられます。
5.The Chesterfield Mayfair
The Chesterfield Mayfairホテルは、環境対策として使い捨てプラスチックの段階的廃止、エネルギーの節約、食品廃棄物の削減に取り組んでいます。
食用食品廃棄物を削減するために、Winnow Solutions と協力しています。Winnowを通して食品廃棄物を測定し特定し、廃棄物の価値を可視化することが可能です。
さらに、従業員の勤務の一部としてミツバチの福祉と維持のボランティア活動を導入しています。環境にとってどれだけミツバチが大切なのか学びながら、ミツバチのお世話をしています。
フランスの事例
世界で最も人気の観光先にもなったことのあるフランスでは、数々のエコツアーを提供しています。フランスのエコツアーとホテルを3つ紹介します。
1.ニースの電動自転車で美しい逃避行
Nissalentours ブティックから始まり、フォート アルバンまで様々な場所を電動自動車で回るツアーです。ガイドと少人数のグループになって回ります。電動自動車のため、疲れることなく楽に観光に配慮して回ることができるでしょう。
2.電動スクーターでのレジャーライド
このツアーは、12歳から参加することが可能です。海に面している都市ラバンヌとオンドルを電動スクーターでガイドと共に回ります。回りながら地方に生息する植物や歴史について学ぶことができます。
3.パリのプライベート ガイド付き自転車ツアー:ギュスターヴ エッフェル塔
環境に優しいキャブバイクで、エッフェル塔や凱旋門など主要な観光地をガイドとともに回るツアーです。日本語も含めた多くの言語の音声ガイドや文章ガイドが用意されています。
4.マダム レーヴ
マダムレーヴは、使われなくなった郵便局を再利用して作られたホテルです。観光地からも歩いて行けるほど近くにある5つ星のホテルです。このホテルでは、屋根に設置してある太陽光発電で50%のお湯を賄っています。
5.ビクトリア パレス ホテル
歴史が色濃く残るビクトリア パレス ホテルで取り組んでいる環境対策は、使い捨てプラスティックゼロです。バスルームからバーに至るまでプラスチックを廃止することで1年間で 100,000 個のプラスチック包装の節約を達成しました。
さらに、地球温暖化対策に積極的に取り組むために、環境憲章を実施しています。
まとめ
紹介してきたように、世界では多様なエコツアーが存在します。SDGsへの取り組みが注目を集めている現在、日本でもエコツーリズムが主要な観光形態の一つとなる可能性が高いです。
エコツアーの移動形態として、電気自動車や自転車の例が多く挙げられていました。しかし、エコツアーの移動手段は電気自動車や自転車だけではありません。その他の移動でどうしても排出してしまうCO2を、カーボンクレジットを使ったオフセットで相殺する手段があります。
Sustineriでは、移動や宿泊にかかる排出量を可視化・相殺する「Susport」を提供しています。ウェブサイト・アプリにAPI連携するだけで排出量を自動算定し、排出される量と同じ量のカーボンクレジットを割り当てることができます。このカーボンクレジットを購入することで、排出してしまったCO2をオフセットできる仕組みです。
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